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5/1/2001(火)
ほお。五月か。
というわけで、先月の「雑感」を日付と逆順から日付順に並べ替えて、index file を書き換える。 見ると、京都に旅行して(4/5)SST の示強変数による定式化について考えていたのが、一ヶ月たらず前なのだ。 なんか、あれから新学期がはじまったり、いろいろあったので、ずっと前だったような気がしていた。
なつかしいなあ。 金閣に行こうと、家族でバスに乗っていたら、立命館大学の前を通りかかったんだ。 立命館ははじめてだったから、大学に勤めるものとしては興味津々でバスの窓からキャンパスとそこを歩く人々を見て
おお、ここが立命館大学か!とはしゃいでいたのも、美しい思い出である。倉木麻衣いないかなあ??
池田研介先生はお元気に研究されているであろうか?
さて、二日にわたって紹介した(4/29, 4/30)Peter Gacs の大論文だけれど、Loa Alamos の preprint server から入手可能なことを知った。 (その後、Gacs の home page の存在も知る。 Recent works に面白そうなのが、いろいろ。)
これだ。 (重量感を表すため大きい太字にしてみました。)とはいえ、これは、ちょっと猛烈に大変なもので、印刷するだけでも大変だから、おすすめはしません。 Gray の Reagder's guide は、はるかにコンパクトで、(簡単ではないが)基本的には読解可能。 (ただし、こっちは、Los Alamos にも Texas にもないみたい。)
とさっきは書いたのだが、Google で検索してみたら、一発で、Gray の web page を発見。 おお、このおっさん見たことあるぞ! で、ちゃんと reader's guide のファイル(ps, pdf)もありました。 ご興味のある方は、ご覧あれ。 (図がないのが悲しいんだよな。 誰が、ナイスな図をつけてくれると、ぐんと読みやすくなるぞ。)
Gray の解説は、単に解説というのではなく、Gacs とは少し違う(おそらくかなり簡単な)モデルを作って基本的に同じことをやってみせてくれている。 基本的な事柄について、ある程度の理解をするだけなら、Gray のモデルの方がよさそう。 (ぼく自身、Gacs のモデルは、未だ見ていない。)
Gacs は、たとえば、dynamics がシンクロしてなくても自己シュミレーションができる(これは信じがたい!)ようにしたり、と徹底的に凝りまくっているので、恐ろしくややこしいようだ。
久々に量子多体系にピントをあわせよう。 S 君(←身近になってしまうと、ネタにしづらいのお)の卒業研究とかもあるし。
随分前に書いた未発表のテクニカルなノートを再検討すべく印刷。 基本的なアイディアは、かなり正確に頭に残っているので、先日メールで質問された点など、いくつかの気になる点を明確にしておきたい。
ふむふむ。われながらコンパクトに書けている。
う。待てよ。
この T ってなんだっけ??しっかりリハビリだ!
5/2/2001(水)
この「日々の雑感的なもの」をテクストとして詳細に分析しつつ読まれている読者のみなさま(←いないって)は、これまで、学習院大学物理学科関係者として、二人の H さんが登場していることを認識されているにちがいない。
交流授業の話(7/12/2000)に登場した H さんと、「南は九州大学から北は北千住まで」発言に関して登場した(当時)北千住(のそばの駅)在住の H さん(10/24/2000)である。 日本人の人名で H で始まるものはさして多くないので、まず、これらは同一人物ではないかという仮説が立てられるのだが、よく記述を見ると、それは、ありえない。
すると、この二人は、ひょっとして、親戚、ないしは、学習院の緑多きキャンパスで知り合ってゴールインしたカップルだったりして・・・などと想像をたくましくされた方も多いであろう、というのは無理があるが、少しはいたかもしれない、というのもやっぱり無理があるか。 ともかく、この想像は、やっぱりちょいと行き過ぎで、このお二人の H さん(前者は男性、後者は女性)は、別の苗字を持つ、他人でありました。
そうです。 思わせぶりな書き方をしていますが、このお二人は他人だったと過去形で書かなくてはいけないのでございます。 人の縁とは不思議なものでございます。 ぼくも、ほんのついさっき知ったばかりなのですが、実は、このお二人は、しばらく前にめでたくご結婚になり、今はご夫婦としてともに人生を歩んでいらっしゃるのでありました。 お二人を昔から存じ上げるものとして、これほどうれしいことはございません。心から、
おめでとうございますと申し上げます。
きわめて内輪な話題になってしまい、外部の読者のみなさまには申し訳ありませんが、ご覧になっている web 日記に何気なく登場されているお二人がめでたく結ばれているというのも何かのご縁かもしれません。 このよき日に免じまして(←どういう意味なんじゃろ?)、どうかご容赦いただければ幸いでございます。
5/3/2001(木)
やたら寒い。
風邪の兆候を感じる。やだな。
夜になってから、(熱などでないように、との願いをこめて)熱流のある系の SST(←最近佐々さんと議論している)の簡単なまとめを作成して、佐々さんに送る。
ちょっと聞いたことのない現象?? 対流のない系で実験してみたいな。
よし、これで、宇宙ステーションでやってもらう実験を提案だ!というのは、もちろん冗談です。 (当面は。)
本当は、このまとめを作るのは、来週の大学院の講義の準備がすんでからにする予定だったのだが、つい、順番を逆にしてしまった。 よって、これから、講義のネタを整備します。
1次元の弱く相互作用する多フェルミオン系のくりこみ群を、グラスマン代数や経路積分を使わず、常識的な(←あくまで、内輪の常識だけど)生成消滅演算子の言葉だけで説明する、というのが目標。 (摂動の低次のみ。 もちろん厳密ではない。) おおざっぱにはできているつもりだけど、何しろ、二次摂動の結果が正確にゼロになることを示さなくてはならないので、ちゃんとキャンセルしなかったら青ざめることになるだろうなあ。
5/4/2001(金)
快晴。
でもやっぱり風邪ひいたみたい。
自宅にて、佐々さんと「熱流が作り出す圧力差」についてメールをやりとり。 熱流のある系の分子運動を思い描こうと悩む。
風邪で鼻水がひどい。 水分補給とビタミン C の摂取を兼ねてオレンジジュースをたくさん飲む。 風邪にビタミン C は、かのポーリング大先生の教えである。 (と思う。) ポーリングといえば、ぼくは、何年か前に、ポーリング先生直筆のサインの入った別刷りをとつぜん送っていただいたことがあった。 (RVB (Resonating Valence-bond)というキーワードの論文をチェックして、その著者に別刷りを送っていたみたい。 ちなみに、ぼくは、ちゃんとポーリングの昔の仕事を引用していた。) 実は、ポーリングなんて、とうに死んでる歴史上の人物と思っていたので、「おお死者からの・・」と大いに驚いたのであった。
などと書いている暇があったら、早く寝るべきですね。
5/5/2001(土)
やれやれ、けっきょく熱が出た。 (いや、熱とはエネルギー移動の一形態に過ぎないので、正しくは「体温が異常に上がってしまった」というのであーる。) 頭痛がないので頭はさえていてちゃんと機能するが、どうも気力が。
それでも、電車で実家へ。 電車のなかで疲れ切った様子で腕を組んで目をつぶっているお父さん。 その姿をみて、よもや、1次元フェルミオン系のくりこみの摂動展開の二次の項を数え上げているとは誰も思うまいて。 実は、半分くらいは本当に寝てたけど。
「熱流が作り出す圧力差」については、佐々さんと、ほぼ完璧に意見が一致。 と、同時に、佐々さんが猛烈な勢いで、アイディアや展望を打ち出してくる。
きわめておもしろい。
現実的な SST にとっての最初の山場が少し見えてきたように思っている。
5/8/2001(火)
咳はでますが、まあ、大丈夫。
金属の反応は何ですか?
「熱流がつくる(と考えているけど本当かどうかは今のところ誰も知らない(と思われる))圧力差」(heat flux induced osmosis ということになったようだ)に悩まされるので、夜の寝付きが悪く、それが回復を遅らせていると思われる。
鼻のかみすぎで、鼻の下が炎症をおこしてしまって、醜い。 この様子を、デジカメにとって、全世界の読者のみなさんにお届けしましょう
はい。パチリなどとやっている暇も趣味もないので、ご安心ください。
明日の講義の準備。 なんとかなりそう。
摂動の二次までの範囲なら、ごく初等的な計算だけで、一次元多フェルミオン系の Tomonaga-Luttinger liquid に相当する固定点を見ることができる。 (運動量分布に異常なスケーリングがでるのを見るのは、ちょっと面倒。 一生懸命やれば、できるだろうことは、今、ようやくわかった。 (←で、安心して、これを書いてるわけ。)) ただし、摂動の次数をあげて、本格的な(厳密な)解析にもっていこうとすると、この形式(くりこみ変換をハミルトニアンからハミルトニアンへの写像としてつくる)では、閉じないようだ。
摂動の二次で面白い不安定性がみえるような物理現象を、ふつうの理論物理のレベルで調べるなら、このやり方で十分なはず。 (ただし、そういう良問がないんだよねえ。)
ほとんど次元解析だけみたいな非常にお手軽な「くりこみ群」を
poor man's RG(RG = renormazliation group) とか poor man's scaling という呼び方をすることがある。 (「お徳用」とか「小型版」とかいう意味で poor man's というのは、英語の普通の表現らしい。 直訳して「貧乏人版」は、かなり、まずい。) ぼくの作ったこのバージョンは、そういうのよりは相当にましなので、まあ、
not-poor-but-to-be-honest-far-from-being-rich-man's RGとでも呼ぶべきであろうか。 ぼくの経済状況そのものか・・・
5/9/2001(水)
さて、ここのところ、この「雑感」や佐々さんの「日々の研究」で断片的に話題にしている
熱流が生み出す圧力差 = heat-flux induced osmosis(ちょっと、この英語名長くないかな?佐々さん。 (この日本語名はもっとダメだけど。)) について、
思わせぶりにちょこちょこ書いとらへんで、何のことかはっきりせんかえ!という憤りを感じていらっしゃる方も、もしかしたら、いらっしゃるかもしれない。
だとしたら、申し訳ない。 たまたま、昨日、知人にメールで説明したので、それを膨らませてここに書いておくことにしようと思い立った。 そうしたら、なんとカラーで図まで描いてしまった。 しかし、ふくらませていたら、長くなってしまった。 六時になって桑本さんのセミナーになってしまった。 おもしろかった。 こういうプロジェクト(彼のポスドク時代の仕事)をやろうというボスは大変だなあと思った。 でも、SUSY とかで、原子の永久電気双極子モーメント(時間反転対称性の破れの直接の証拠になる)のまっとうな評価なんてできるのだろうか、とも思った。 セミナーが終わったら、夜遅くなってしまった。 頭も痛くなってきてしまった。 でも一応書けた。 直すべきかもしれないけど、そろそろ大学を出ないとダメだ。
というわけで、もしご興味があれば、ちょっと長いけれど、ご覧ください。 (オチはありません。)
なお、以下で、議論されている現象は、すべて理論的予想の域を出ないものですので、それを信じた読者がいかなる経済的・肉体的・精神的、有形・無形、あるいは、形而上・形而下の不利益を被られても、当方ではいっさい責任をとりかねますのでご了承ください。
容器の中に流体をいれ、左側の壁を温度 T の熱浴に、 右側の壁を温度 T' の熱浴に接触させる。 これら、左右の壁は熱をよくとおすとする。 これに対して、上下、手前、奥の壁は、断熱壁(図では灰色)とする。 (上下、手前・奥は周期的境界条件にしてもいい。(実験する気がなければ。))
ここで、定常状態が実現すると、流体には、左右方向に温度勾配ができ、また、一定した熱の流れが生じる。 (図にあるような色の変化は、たぶん、生じない。) なお、対流はいっさい生じていないとする。 (以下も同様。)
圧力を、左右の壁を水平方向に押す力(を面積でわったもの)と定義する。 すると、この定常状態では、左右での圧力は完全に等しいことに注意。 そうでなければ、流体全体が力を受けることになり、どちらかの方向に全体として加速されてしまう。 (ニュートン力学!)
このような単純な定常状態では、流体の(水平方向の)圧力は、いたるところ一定と考えるのが正しい。
ここで、容器の中央に、温度 T' の熱浴につながっている(やはり熱をよくとおす)壁をさし込む。 ただし、この壁には小さな穴がたくさんあって、流体が出入りできるようにしておく。
これで、全系が定常状態に達すると、箱の左半分だけで、熱流が生じ、右側は温度勾配のない温度 T' の平衡状態になる。 つまり、定常状態と平衡状態が多孔質の壁を介して接触し、物質をやりとりしあって、バランスしているという状況が得られるのだ。
こういう、ちょっとエキゾチックなつりあいを考えるところが味噌。
再び、圧力について考える。 (圧力は、いつでも左右の壁を水平方向に押す力から決める。)
- 箱の左側は定常状態だから、上の議論のように、この中での圧力は一定。 その大きさを p とする。
- 箱の右側は、ごく普通の平衡状態だから、圧力はもちろん一定。 その大きさを p' とする。
熱流のある側の圧力 p は、平衡の側の圧力 p' よりも大きいという驚くべき(←少なくとも、ぼくにとっては)結論が得られる。 しかも、これは熱流の向き(つまり、T と T' のどちらが大きいか)には依存しない。 ともかく、温度差があれば、熱流がある非平衡の側の圧力が大きくなる、という結果。 (高温側が膨張した、といった、平衡でのアイディアで説明できる現象ではない。 われわれが理解する限り、これは(本当だとしたら)純粋に非平衡の効果による現象である。)
上のような体積一定の設定だと、温度 T を変えて熱流をコントロールすると、左側の平均温度や平均密度が変化してしまい、あまり、見通しがよくない。 (それに、実験するとき中の圧力が変化しすぎると爆発とかしそうでこわい。)
そこで、右の図のように、左端の壁が動くようにして、これを左から、一定の圧力 p に相当する(一定の)力で押してやる。 そうしておいて、p と右側の温度 T' を固定したまま、左側の温度 T を変化させて、熱流 J をコントロールすることができる。 そして、右側の平衡部分の圧力 p'(T',p,J) が J にどのように依存するかを調べることができる。
SST からは、
∂p'(T',p,J) / ∂J = - Ψ / v'という等式が出てくる。 ここで、v' は平衡側の流体の単位物質量あたりの体積で、Ψ は熱流 J に共役な示量的物理量である。 Ψ は一般に J の奇関数で、J が正なら非負、J が負なら非正。 これから、J が正でも負でも、その絶対値を増加させると p'(T',p,J) が減少するという結論が得られる。
この話は、平衡系での浸透圧 (osmotic pressure) の現象に、よく似ている。
浸透圧のときは、まんなかに半透膜があり、左側にだけ溶質が溶けていた。 その効果によって、左右に圧力差が生じた。 (溶質、溶媒の種類によらず、左側の圧力が高くなった。)
ここで、穴のあいた壁が半透膜に相当する。 そして、熱流のある状態が、溶質が溶けた状態に対応することになる。
実際、数学的な形式だけをみれば、この heat-flux induced osmosis と、通常の浸透圧の扱いは、まったく同じと言ってよい。
熱力学的な議論だけから、上の Ψ の値を決めることは、(ほぼ)できない。 すると、Ψ が、単に上の話にしか登場しないなら、なんか詐欺みたいである。 しかし、熱力学の議論のつねとして、同じ量は他の現象についての関係式にも登場するのだ。
一番上の図のような単一の容器内の系を考える。 (ただし、壁を可動にして、全体の圧力を一定値 p にする。) T が中にある物質の融点より高く、T' が融点より低ければ、低温側は固体、高温側は流体、という相分離した定常状態が得られるだろう。 そして、高温側から低温側に一定の熱流が、ある。
微生物は堆肥の山に何をすればよい
この状況で、系の各部分の温度が正確に測定できたとして、固体と流体のぎりぎり境目での温度を測ってみる。 すると、SST を使うと、この境目の温度は J に依存して、平衡での融点からずれるという結論が得られる。 この融点のずれは、Clapeyron の関係式に類似した
∂T(p,J) / ∂J = - (Ψ0 - Ψ1 ) / ( s0 - s1 )という等式を満たす。 ここで Ψi はそれぞれの相での Ψ であり(そうです。 Ψ には、未だ名前がないのでした)、si はそれぞれの相での単位物質量あたりのエントロピー。
この融点のずれも原理的には測定可能である。
このように、複数の等式に同じ Ψ という量が登場する。 それゆえに、少なくとも原理的には、SST の予言の正当性を実験的に検証できる段階になったといえると思う。
さて、以上のような、SST からの予言について、どう考えるべきか?
いうまでもなく、これらは、すべて、SST (定常状態熱力学)のいくつかの基本的な仮定を(いくつかの理論的状況証拠に励まされつつ)認めた上で、そこから理論的に導出したものである。 よって、
- SST の仮定は(現実世界では)誤りであって、これら効果は存在しない
ただし、われわれとて、闇雲に定常状態の熱力学を作っているわけではなく、かなり厳しい制約のなかで、既存の物理の理論との整合性や、モデルでの再現可能性も検討しながら、すすめているので、この可能性が猛烈に高いとは言いたくない。
すると、残る可能性として、
- われわれの解析は正しいが、現実の系での非平衡熱力学量 Ψ はあまりにも小さいので、これらの効果はいっさい実験にかからない。
- われわれの解析は正しく、これら効果も存在する。 それは、工学などの分野で既に知られている。 (が、なぜか物理にはあまり伝わっていない。)
- われわれの解析は正しく、これら効果も存在する。 新しい実験で発見されるのを今か今かと待っている。
今のところ、鍵になる Ψ の信頼できる評価がないのがちょっと苦しい。 しかし、本当にまともな評価は、非平衡定常状態の統計力学を作らなくてはできっこないのであって、それを建設する前段階として、今は、マクロレベルで SST を作っているのだった。 よって、今、あまり多くを望むことはできまい。 それでも、佐々さんは、いくつかの方法で Ψ の評価を与えることをやっていて、それが進めば、実験の示唆もできるかもしれない。 あと、数値計算も有望ことは言うまでもない。
というわけで、ぼくとしてはけっこう面白い状況になってきたぞと思っていることがおわかりいただけたのではないだろうか?
5/11/2001(金)
ふう。
相当に苦しい一週間。 体力的にもスケジュール的にも、相当、ぎりぎりだった。 講義の準備が何とか間に合い、レポート問題も(手書きになってしまったが)なんとか作れたので、心底ほっとした。
最近は、病み上がりで体調が悪いので、ビールも我慢して、早めに布団に入っている。 しかし、異常なほど寝付きがわるく、結局は布団の中でずっと仕事をしている。 基本的には、SST について、熱流について、ありとあらゆることを考えている。 必死で頭を使っているから寝付きが悪いのかもしれないし、体調のせいで寝付きが悪いから頭を使ってしまうのかもしれない。 いずれにせよ、朝が来ても睡眠は足りていない。
眠ってからも睡眠が浅く、変な夢をみる。 火曜あたりの夢:
山の上の方(学生時代に友達といった奥蓼科のあたり??)に、ぼくらは、空き缶とかを積んだ情けない祭壇みたいなのを作って喜んでいる。 が、ふと右手をみると、祭壇の横は猛烈な谷になっていて、積み上げた空き缶の一部は、もうオーバーハングしたみたいに谷に突き出ている。 これは危ないと思っていたら、ちょこっと袖が触れただけで、それが崩れて崖のずうううっと下の方にひゅうううううと落っこちていく・・ああ、やな感じ。
そして、水曜の晩。
やはり眠れない。 苦しみながら、Markov 過程についての話、佐々さんたちの Langevin 方程式の話、昔の SST の危機の本質、などなど、SST についてぼくが知っている全てのことを頭の中に並べて、必死で見通しを得る。 (ようやく、全てを頭にロードできるようになった。 こればっかりは、時間をかけるしかない。) 一瞬、猛烈に絶望的なビジョンが浮かび、web 上で堂々と heat-fulx induced osimosis の解説したにもかかわらず、すべて、嘘なのではないか、という不安に教われた直後、現在の定式化の一つの意味づけが、はっきりとわかった。 やはり圧力や化学ポテンシャルといった「由緒正しい」一般化力は、偉いのだ。 これらにとことんすがるというのが一つの正解であった。 大胆ではないし、当初の大野思想からすれば矮小化でもあろう。 しかし、これは、相当に堅実な理論的出発点であると思う。
というわけで、少し(←と書いているが、実は、かなり)安心。 SST に本気で取り組んでよかった、とようやく思った。
で、ようやく安眠できるかというと、どうも、そうでもないのだなあ。
やはり体調のせいかな? それろも、相変わらず、色々と考え続けているせいかなあ? あ、それとも、ビール飲んでないからかも。 (今夜は果てていなかったら飲んでみよう。(何事も実験。))
5/13/2001(日)
やれやれ。 なんとか、夜にビールを飲むことのできる体に戻れた。 うれしや。
念のために書いておくけれど、ぼくは、別に、毎晩欠かすことなくアルコールを摂らねば生きていけない、というような人ではない。 体調やら気分やらで、時々、何週間も、ほとんど飲まずに暮らすこともある。 で、そういうときは、外でも飲まないことにして、きっぱり断る。
誰か:さ、田崎さんもビールをどうぞ。
ぼく:あ、いえ、ぼくはウーロン茶を。
誰か:あ。お酒は飲まれないんですか?
ぼく:脳細胞が死にますからね。
誰か:・・・
ま、くだらない冗談なのである。 が、あまりぼくを知らない人の場合、ぼくが無茶苦茶な理論家だということだけは知っているから、こいつならひょっとしてマジで言っているのではないかと焦ることになる。
すみませんでした。
昨日、佐々さんからΨの挙動についてのノートの改訂版が届く。 前回のものに比べると、はるかに説得力があり、つよい。
Ψは(そもそも存在するなら)臨界点で発散するのだ。
本当に見えるといいな。どきどき。
今日の佐々さんからのメールで、11 日(5/11)に「相当に堅実な理論的出発点」と書いたものの核心にある仮定が何なのかを指摘された。 なるほど。 そうだよね。 そこにちゃんと注目していなかったとは不甲斐ない。 よく見えるようになったつもりでいたのに、まだまだ目が曇っている。
今日の午後は、再び横たわって、Markov 鎖の変分原理から、この「核心」についての何らかの知見が得られるかと模索。 が、何もも得ず。 というより、Markov 過程の一般論からは何もでないか?? でない、ということが見えたような気もするが、もう少し慎重に。
ともかく、われわれの現在の定式化は、
SST (定常状態熱力学)と呼ぶべきものがあるという一点だけは仮定し(←きわめてささやかな仮定とは言い難いけど)、それ以外は、極限まで謙虚に堅実に、何も仮定しないで進んでつくったものになっている(と信じる)。 それが果たしてまともな科学になっているのか、単なる理論的幻想なのか、それは将来(といっても、近い将来)の研究に待たなくてはならないだろう。
ま、今日のところは、人事を尽くしたので、ビールでも飲んで寝よう。 死ぬな、脳細胞。
5/16/2001(水)
午前中のくりこみ群の講義は、なかなかの集中力とエネルギー(だったと思う)。 実は、秘かに薬物(リポビタン D)に頼っていたりするのだが。
その反動か、午後は集中力を欠く。 Markov 仮定の一般論から導かれる SST 第二法則もどきから、真に物理的に意味のある SST 第二法則は得られない、という予期していた結論に落ち着く。 そのためだけに、午後を使ったと思うと、ちょっと悲しいが、ま、しかたがない。
早寝しようと思ってお風呂につかっていたら、ようやく頭がさえた。 純然たる現象論としての SST 第二法則を操作的に定式化するひとつの方法を整理することができた。
なぜ我々は地震を持っていますか?
というわけで(←どういうわけかな?)、「SST とはなんじゃ?」との声も目にする今日この頃なので、前回の長すぎた解説(5/9)よりも簡潔な説明を与えておこう。 今、お風呂のなかで整理した認識も含めつつ。
さて、右の図は、前回も登場した図2である。 容器の左側の壁が温度 T、右側の壁が温度 T' に保たれている。 さらに、容器の中央に多孔質の壁があり、これもまた温度 T' に保たれている。 もちろん、多孔質の壁をとおして、流体は移動できる。
この容器のなかに、一種類の流体を入れ、長いあいだ待つ。 すると、もはや、マクロな時間変化のない状況が訪れるだろう。 だが、それは、熱平衡ではない。 多孔質壁よりも左側では温度差があるため、つねに熱流(エネルギーの流れ)をともなう定常状態が生じる。 他方、多孔質壁よりも右側は、(少なくともマクロには)普通の平衡状態であろう。 ここで、定常に達したあとは、多孔質壁を介しての物質の移動はない。
さて、SST(定常状態熱力学)とは、(たとえば)このような非平衡定常状態を、全体として扱うための現象論の枠組みである。 それは、通常の熱力学の自然な拡張になっており、平衡熱力学と同様の定量的厳密さと予言能力を持つ(はずのもの)である。
そのような予言のひとつが、「流れの誘起する圧力差」= flux-induced osmosis である。 その内容は、ごく簡単であり、たとえば上図のような設定では、平衡になっている右側よりも、非平衡になっている左側の方が圧力が高い、ということである。 いいかえれば、多孔質壁は右向きの力を受けるということである。 (この圧力を利用した「熱流エンジン」が(原理的に)できます。 (SST が正しければだけれど。ただし、もし万が一 SST が成立しないとすると、また別のタイプの「熱流エンジン」ができることになる。(下記参照) 転ばないつもりだが、もし転んでもただでは起きないのであーる。) たとえば、多孔質壁の抜き差しするといい。 発明好きの方は考えてみてください。)
注意していただきたいのは、この現象は、もはや物質のマクロな移動も目に見える状態変化もおきなくなった定常状態で生じる(と予言されている)、ということである。 なんらかの物質の流れや、濃度の一時的な不釣り合いなど、自明な効果の現れではない。
さらに、このような現象は、平衡系では決しておこりえないのはもとより、いわゆる局所平衡による定常状態の(近似的)取り扱いでも決して再現できない。 (もし本当なら)、純粋に定常状態の効果として生じるものといえるし、おそらくは、SST の枠組みを用意してはじめて議論できる現象といえるだろうと思っている。
さいごに、このような(あるいは他の)SST の予言の基盤になっている SST における熱力学第二法則がどういうものかを説明しておこう。 (ここがお風呂で整理した部分なのだ。 ちなみに、ぼくは、まだ、湯上がりスタイル(←ご想像におまかせします)のまま、iMac に向かってこれを書いている。)
SST における熱力学第二法則: 上の図の装置で、右側の壁と多孔質壁にピストンか何かをつけて動かせるようにしておく。 これらピストンを(わずかに)操作して任意のサイクルをおこなう。 そのサイクルにおいて外界から系におこなう仕事は正または 0 である。(ゆっくりした操作に限るなら、仕事は 0 といってもいい。)通常の熱力学の Kelvin の原理によく似ている。 実際、操作に関わる二つの壁は、どちらも温度 T' の熱浴に接しているし、これらの壁の間の流体も(準静操作においては)つねに平衡にある。 しかし、これは、通常の Kelvin の原理ではないし、通常の熱力学の何らかの法則から導ける物ではない。
通常の Kelvin の原理との根本的な違いは、この平衡系(=多孔質壁より右側)が熱流のある非平衡定常状態(=多孔質壁より左側)と接触しているということだ。 ここで考えているサイクルは、一見すると、温度 T' における等温サイクルのようであるが、本当は熱流のある非平衡系と接触している。 もしかしたら、なんらかの方法で熱流の存在を利用して、外界に正の仕事をする「第二種永久機関もどき」が構成できるのかもしれない。 (しつこいけれど、それは、通常の熱力学の第二法則には抵触しない。) われわれの SST 第二法則の主張は、正の仕事をするサイクルを作るのは容易なことではなく、このように熱流のある系の「はじっこ」を使えるだけでは、それは不可能だ、ということである。
いうまでもないが、このような新しい「原理」の正否は、なんらかの(間接的な)実験を通じてチェックするしかない。 特に、flux-induced osmosis や融点のシフトなどの SST の予言を検証(あるいは反証)することで、かなり強い情報が得られると思う。
というわけで、一通りの解説を書き終えたら、湯冷めしてきた。 そろそろ終わりにして、ビールでも飲みましょう。
(↑などとワンパターンの結びを書いてみましたが、実は、この日記は 16 日の夜には仕上がらなくて、今、17 日の朝に最後の手直しをしているのでした。 嘘を書いてごめんなさい。 「湯冷めしてきた」にリアリティーがないぞと感じられた読者は鋭いです。)
5/20/2001(日)
すっかりごぶさたしてしまいました。
仕事が忙しいだけでなく、個人的にも忙しく、なかなか「雑感」を書く暇がありません。 このブランクのために、かなり読者を失いつつあるでしょう。 よって、今日は久々にお気楽なネタかというと、さにあらず。 SST 関連について真面目なことだけを書きます。 図もオチもなにもありません(中身は少しあります)ので、そのつもりで。
早川さんが、flux-induced osmosis を温度勾配のある Boltzmann gas において検証する試みを開始。 うれしい。
その結果、いまのところ、
- 温度勾配の 1 次のオーダーでは、圧力差は発生しない
- 多孔質壁などない系で、温度勾配の 2 次のオーダーで、圧力に異方性が生じる。 (熱流に平行な方向の圧力が大きくなる。)
これらは、どちらも SST の現象論的な考察と一致しているし、実は、ぼくたちが SST に基づいて(事前に)期待していたとおりの結果なのだ。 (さらに、2 の結果は、若干の楽観的な仮定をしてやれば、(ぼくらが予言したとおりの符号の) flux-induced osmosis の存在を意味する。 (flux-induced osmosis の本格的な計算は、早川さんと K さんがやってくださる期待されている。(ちなみに 3/2/2001 の「い×かわりか」についての記述は K さんのことではないか、というのは事実無根の言いがかりであります。)))
熱流系の SST のマクロレベルでの理論的な整合性については、ほぼ完璧な自信をずっと持っている。 それでも(神様があまり親切でなければ)それは現実とは対応しない空っぽの理論に過ぎないという可能性はかならず残る。 今回、こうして、具体的なミクロモデルの系統的な近似計算から、まったく同じ結果が得られたという事実は、SST への強いサポートになる。 というより、これで、flux-induced osmosis が存在すると確信できたので、ぼくはとてもうれしいのであった。
実際問題として、flux-induced osmosis がどの程度の大きさを持ち、どの程度実験にかかるのかは不明。 通常の流体では非常に小さい可能性もたしかにある。 実際、小さかったからこそ、これまで見いだされなかった、あるいは、見いだされても忘れてしまった、のかもしれない。
しかし、もっとも原理的な問題としては、
そのような効果が(小さかろうと大きかろうと)ともかく存在するということ、そして、
SST には、それを的確に予言する能力があったことは、本質的に重要だと思う。 既によく知られている現象の亜流を問題にしていて、しかも、それがごく小さい場合には、そういうものを問題にする研究は単にオタク的研究であろう。 しかし、純粋に非平衡のエネルギー輸送に起因する浸透圧というのは、(ぼくらが知る限り)新しい概念であり、それは、かなり面白い話になっている気がするのであった。 (今、少し酔っているので、文章の調子がややおかしいし、主張に抑制がない。 文章における「ビート」と「うねり」が乱れているでしょう。)
もちろん、flux-induced osmosis や、非平衡秩序パラメターΨを調べることで、非平衡の物理に新しい概念を付け加え、さらに、今まで手が出なかった諸現象を理解する糸口が得られるなら、猛烈にうれしい。
ところで、
別の理論で同じ結果が出せるなら SST は不要では?という問いがあるのかないのか知らないが、取りあえず、自明なことを答えておこう。
- そもそも SST というのは熱力学の拡張であり、基本的に、すべてのマクロ系に適用できる普遍的な理論である(と信じて作っている)。 希薄気体で温度勾配が小さい状況で具体的な結果を導き出す分子運動論とは、まったく毛色がちがう。
- SST は、融点シフトなど、希薄気体とはほど遠い状況での現象にも適用しうる。
- 最初に SST から flux-induced osmosis の予言が出てきたとき、ぼくは、それを分子運動の立場から理解しようともがき、ともかく、速度分布が非等方的(熱流の方向の速度が大きい)になれば、予言どおりの圧力差が出てくることをみた。 さらに、圧力差が熱流 J の偶関数であることも予言されていたので、熱流や温度勾配について線形な理論では flux-induced osmosis が見えないことも知っていた。 ほとんど計算らしい計算もしない SST の考察から、(少なくとも希薄気体については)膨大な計算で確かめられる結果が正しく予言されていた、というのは、かえって、SST の潜在能力を示していると思いませんか?
- SST をめぐるアプローチで、われわれが目指しているところは、もっとでかい。 (そういう「演説」はまたいずれ。 (佐々さんがやってくれるであろう。) その一端は、上の方に少し書いた。)
5/21/2001(月)
佐々・田崎会談。
よく考えると、佐々さんに会うのは3月の学会以来ではないか。 さらによく考えると、2人でだけ SST について論じあったのは、これがはじめてみたいな気がする。
現状の整理、問題点の掘り下げ、など。 やはり直に話し合うと圧倒的に理解と論点の洗い出しが速い。
佐々さんのパワーは前から知っていたが、とくに、flux-induced osmosis をターゲットに据えたあとの勢いはもの凄い。 手持ちの素材でできる評価を猛烈な勢いでこなしていくだけではなく、関連する過去のアイディアや過去の計算も次々と発掘し消化していく。 要するにエネルギーがある。
などと言って感心しているなどというのは、まったく私らしくないので、ごちゃごちゃ言わず、気合いを入れてやるのだ。
それにしても、 凝固点シフトについて考えていた頃(1/27)に比べると、随分と風景は変わった。 それもそのはずで、あの頃はせっせと雪かきをしていたわけで、もはや、梅雨入りを心配する季節になっているのだ。 (こういう振り返り方ができるのは「雑感」を書いていて愉しいところ。 1/27 の結びの「つづく」に込めた気持ちがそれなりにちゃんと生きているのはうれしい。) 雪かきをしながら頭に浮かべていた傲慢な台詞を堂々と言える日が来るといいな。
5/22/2001(火)
個人的忙しさが増大してしまっているので、週末などに仕事ができず、ちょっと多忙気味。 ていうか、実は、前代未聞的に忙しくて、もう講義の準備とかも自転車操業になってきて、苦しいのだ。 (でも、手はぬきまへん。)
ずううううううっと前に頼まれて、しばらく前(2/7)に一度思い出し、その後また忘れていた××社「物理学じてん(辞典か事典か忘れた)」だが、忙しいときに限って出版社の方が直接ご足労くださってご催促あそばされてしまった。
だいだい8割は集まりまして、あと2割です。
なあんだ。2割もいるのか。いいじゃん。や、それは大変だ。あわてて書きます。下書きはできていますので。(頭のなかに)残り1割になったら、もう待たずに作業を始めます。
そうですよね、そこまで待っていられませんよね。
よし、そうなったら書こう。
6月の冒頭は、なんか猛烈に忙しそう。
SST の論文も書かねば。
5/25/2001(金)
こちらが公私ともに忙しいときに、娘も中間テスト真っ最中で忙しく夜更かししているので、つい引き込まれて夜更かしして、もろに寝不足。 へろへろと登校してきたが、しかし、講義をはじめるとなぜか快調。 ハイテンションである。
あとでがっくり来ないことを祈ろう。
統計力学の講義は、ようやくカノニカル分布の導出へ。
数年にわたる試行錯誤がいよいよ形を成してきて、統計物理の基礎付けについて悩んできたこと、学んだこと(特に、Boltzmann の忘れられた思想)を軸に、かなり見通しのよい(←少なくとも、ぼくにとっては)導出になってきたように思う。 今年は、いくつかの新しいことをやったため、やや冗長だったかもしれないが。
で、今日の講義中に気付いて宣言したのは、
「等重率の原理」という用語は誤解を招くよくない言い方であるということ。 これは、自然界の原理でも何でもない。 真の原理になるものは、
巨視的な系では、あるエネルギーをもったミクロ状態のほとんどすべてはそっくりであり、それが、マクロな平衡状態に対応するという Boltzmann の洞察であろう。 (そうか、これを「Boltzmann の原理」と呼ぶことにしよう。 来年から。)
この「Boltzmann の原理」に基づいて、マクロな平衡状態のミクロモデルを作るための、ひとつの方法が通常おこなわれている確率による方法なのだ。 だから、等重率の原理という言い方はやめて、「等重率の処方」というのが正しい。 (実は、「等重率の処方」という用語は、さっき講義中に思いついたのだ。)
というわけで、ここでピントがあいまくったところで、一気に統計力学の教科書の該当個所を書き上げてしまえば、素晴らしく能率的ではないか!
が、もちろん、そんな時間はないんだよな。 午後からはゼミだし、「理学部パンフレット」の改訂作業の締切は明日に迫っているし、研究会の準備はまだまだだし、学会誌の座談会の最終チェックが来ているし、かつ、来週の講義たちの準備はほとんどできていないし、他にもいくつかあったような気がするし、あー、どうなるんだろう。
5/28/2001(月)
よし。理学部パンフレットの作業だけは終了。 これをやらないと骨を折ってくださっている方に迷惑をかけるしね。
次の作業に向けて、机の整理だっ!
ばさばさどすんがさごそがさごそどん。 (←書類の束を無造作に束ねて横にどける音。)
げっ。 やり忘れていた××××と××××と・・・・・
見なかったことにして やっぱり机の整理は後回しにして、研究会の準備をします!
5/29/2001(火)
早川さんから、flux-induced osmosis (FIO) (5/16 など)に相当することが
R. Dominguez and D. Jouに書いてあるようだとの情報。
Therodynamics pressure in nonequilibrium gases
PRE 51, 158 (1995)
この David Jou という人は、かなり昔から独自の非平衡熱力学の定式化を試みているらしい。 (ぼくは読んだことなかった。) 形式的には SST と類似しているので、似た結果が出ても死ぬほど驚くというものではないのである。
ともかく図書館に行って、関連論文を集めてコピー。 製本雑誌を何冊も重ねて運ぼうとすると、腰が痛い。 学生時代には、山ほど雑誌を抱えていって、膨大な量をコピーしていたものだが、やはり年月はたっているのである。
で、いっぱい取ってきた割には、けっきょく上に挙げた論文の最初のへんを見ただけなのだが、
- 気体分子運動論のレベルで見れば、われわれが FIO と呼んだものをみている(のであろう(よくわからないけれど))。
- 現象論のレベルでの理論の整合性等は、相当に弱くみえる(←婉曲表現)。 変数の取り方なども天下りであって、説得力がない。 というより、彼らのように熱流と垂直な圧力を見たいときに、熱流を変数にとってしまうと(系が一様でない限り)理論は内部破綻をおこす。 (これが、3月末の SST の危機。(3/25))
彼らのアプローチを一通り見ておく意味はあるものの、それほど気にすることもないであろう。
へへへ、ジョオオオオ。 非平衡熱力学の明日はどっちだあ。などと似ない物まねでつぶやいてもみるが、実は、Jou さんは西班牙(←スペインです。無教養でも ATOK でやってれば書けるね)のお方ゆえ「ホウ」とかそういう風に読むのかも知れず、それなら、このネタは(知らない人たち(←Jou さん本人を含む)には通じないことを度外視するとしても)もとより成立しないわけであった。
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田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
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hal.
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