高校生物 進化発生学 by 池田博明 (訳と編集) 2010年3月
■『LIFE』(第8版,2006年)の一部翻訳紹介
ちなみに,講談社ブルーバックスでは,この第20章を含んだ
2010年8月に第3巻「分子生物学」が発売予定。
【一部の図がソフトの不具合により転送不全ですが影響が少ないので修正は少し後で行ないます】
序節 眼の獲得 (LIFE 第8版の第20章より 直訳ではない。大意です)
●第1項 分子ツールキットは発生をどう支配するのか
「生物体に多様性をもたらす発生上の遺伝子は等しいが、結果が異なる」
多細胞生物のパターン形成を支配する転写因子と細胞外シグナルをコードする遺伝子は分子ツールキットと考えられる。ツールキットとは大工道具箱である。
植物のMADSボックス遺伝子や、動物のHOX遺伝子がツールキットである。
●第2項 大きな効果をもつ突然変異がどのようにして体の一部だけを変化させるのか
「遺伝子スイッチは分子ツールキットの使い方を支配する」
▲佐々木裕之『エピジェネティクス入門』 (岩波科学ライブラリー,2005)より ソライロアサガオの |
▼春化のしくみ 低温はVRN2 (Gilbert & |
▲エクジソン活性の調節を説明する仮説.他のステロイド・ホルモン同様, エクジソンは細胞にたやすく入る(脂質である).内部で受容体と結合, 細胞質にある受容体タンパク質はエクジソンが結合するまでは働かない. 結合した化合物は核内に入り,遺伝子発現を活性化する.それによって, 酵素ヒストン・アセチルトランスフェラーゼや他の転写因子をリクルートする. (Gilbert & Epel 2009より) 本文;昆虫のホルモンは転写因子を活性化することで働く.変態・脱皮 ホルモンであるエクジソンは多くの変化を誘導する.エクジソンが結合 することで活性を持った受容体タンパク質が遺伝子を発現する. |
「モジュール性は遺伝子発現の時間的空間的パターンを変える可能性がある」
●第3項 種が進化する変異はどのようにして可能なのか
●第4項 環境が発生をどのようにモジュール化するのか
「生物体は正確に将来を予言するシグナルに反応する」
一般的なエラー方程式を動作する方法
表.表現型の発生に対する環境要因 (包括的リストではない) (Gilbert & Epell,2009 p.11より) | ||
正常発生に依存する | ライフ・サイクルに依存する | 胚や幼生の環境適応 |
A.形態的表現型多形 | A.幼生セツルメント | A.卵保護 |
1.栄養依存 | 1.基板ー誘導された変態(二枚貝,腹足類) | 1,太陽遮断幕(アマガエル、ウニ) |
2.温度依存 | 2.餌ー誘導された変態(腹足類,ヒザラガイ) | 2.植物由来の保護(Ultetheisa) |
3.密度依存 | 3.温度/光周期依存の変態 | B.幼生の保護 |
4.ストレス依存 | B.休眠 | 1.植物由来の保護(Danaus;カメムシ) |
B.性決定多形 | 1.昆虫の越冬 | |
1.位置依存 | 2.哺乳類の遅延移植 | |
2.温度依存 | C.有性/無性発達 | 【原註】 このリストは Gilbert,2000によるものだが 決して包括的なリストではない。 動物中心になっており、 多くの植物-動物相互作用が 含まれていない。 |
3.社会依存 | 1.温度/光周期に誘導された(アリマキ,Megoura) | |
C.捕食者に誘導された多形 | 2.温度/コロニーに誘導された(ボルボックス) | |
1.適応的捕食者回避形態 | D.共生/寄生 | |
2.適応的免疫応答(哺乳類) | 1.血液食(Rhodnius,蚊) | |
3.適応的繁殖配分(アリ集団) | 2.片利共生(Euprymna/Vibrio,卵/藻類;哺乳利腸内微生物) | |
D.ストレスに誘導された骨形成 | 3.寄生(ボルバキア) | |
1.出生前(繊維性半月) | E.発生的な植物と昆虫の相互作用 | |
2.出生後(哺乳類の膝蓋骨;ヒトの下顎?) |
▼温度依存の 性決定の例. 3種の爬虫類 アメリカワニ アカミミガメ ワニクビガメ [Crain & Guillette マイクロ波statellite一部のcomponenetsは何ですか | |
▲性決定時期の性比と温度が与える影響(魚の例) Menidia menidiaの北部から集められた集団では 温度は性決定にほとんど効果がない.しかし、 南方にくと、温度の効果は大きくなり、高温でメスが減り、 低温でメスが増える.[Conover & Heins 1987参照] (Gilbert & Epel ,2009より) | ▲角の有無がオスの繁殖戦略を決定する フンコロガシの例.メスは地中に穴を掘って住む. フンは幼虫の食物である.角のあるオスはトンネル の入り口を守る.小さくて角のないオスはトンネルを ガードせず、メスの近くに自分の穴を掘ってメスに 接近する.[Emlen2000参照](Gilbert & Epelより) |
▼フンコロガシの一種 Onthophagus acuminatus 角のあるオスと角のないオス 最終脱皮のときの このホルモンの力価は 刺激の効果は角なしか 角ある大型個体と |
「将来を正確に予言するシグナルでも、常に応答するとは限らない」
捕食者が誘導する発生の可塑性(マルミジンコの場合)。 頭が突き出たミジンコは捕食者(ハエの幼虫である)に (LIFEより ) |
▼捕食者に誘導 された防御 [Adler & Harvell (Gilbert & Epel |
▲捕食者がいないときの標準型と捕食者がいたときの誘導型の生存率を比較すると誘導型のほうが高い。 ▼ツリー・フロッグの卵塊はヘビに捕食される。するとその振動が卵の孵化を早める。 (B)が捕食者の振動に誘導された5日で孵化した未熟型の幼生 [Warkentin 2005; Warkentin et al., 2006参照] |
▲1922年の「もっとも完全に ヘビは猫を食べるようになる | |
▼IGF-1とAKTの活性が 筋肉の発達を刺激する. (A)IGF-1がその受容体 (B)マウス胎児の (C)gastrocnemius (Gilbert & Epelより) | |
▲ゼブラフィッシュの腸は、共生微生物を欠くと正常に発生しない. 腸のアルカリフォスファターゼ活性が青く示される.8日めの横断切片の刷子縁である. (A)受精後8日めのゼブラフィッシュ胚の腸で刷子縁にアルカリフォスファターゼ活性があるのが分かる. (B)同じ日の胚だが無菌のため活性が無い. (C)無菌のフィッシュの5日めにバクテリアを与えて8日めの胚で活性がある. [Bates et al., 2006参照;写真はKaren Guilleminの厚意](Gilbert & Epelより) | |
▲クローン選択説.それぞれのB細胞は無数の可能性のなかから一種類の抗体を生産する. その抗体に特異的な抗原が提示されると、B細胞は分裂し始める. (マクロファージの消化と抗体の提示は簡略化したため書いていない).この抗原に刺激されて 分裂したほとんどのB細胞は分化し、形質細胞となってひとつの抗体を生産するB細胞クローン となる.分裂細胞のあるものは記憶細胞となり、もとの抗原と同じものが再侵入するとす早く 反応する.(Gilbert & Epelより) |
左側のマメ植物は弱光条件下で生育したもの。 細胞が伸長反応をし、もやし状になった。 右は対照で普通の光条件で生育したもの。 (LIFEより) |
「生物体は、将来の状態と関係ないシグナルには反応しない」
「生物体は、新たな環境シグナルに対する適切な反応を欠いているようである」
●第5項 発生の遺伝子はどのようにして進化を強いるのか
「進化は既にあるものを変化させることによって進む」
発生遺伝子と失われた構造 ヘビでは背柱の発生におけるホックス遺伝子の これらの爪はロイヤル・パイソンの痕跡後肢の (LIFEより) |
「保存された発生遺伝子が平行進化をもたらす」
▲トゲウオの平行的系統進化:海にいる3本のトゲがあるトゲウオは小さい(3cm以上はない)。 海洋性トゲウオ(上)は鋭いトゲと装甲を持つ。 多くの独立の例では、淡水性のトゲウオは海洋性の祖先に由来し、刺と装甲は著しく退化、 もしくは消失してしまった。海洋から淡水型への系統的変化は一定して平行的であり、 Pitx1遺伝子発現の欠損の結果である。 Pietx1遺伝子が発現すると、背面と腹面にトゲが発生する。(LIFEより)(Gilbert & Epelより) | |
▲淡水魚の遺伝子モデル.Pitxl 1遺伝子の近くに4個の遺伝子を仮定します。 この遺伝子は甲状腺、腹鰭のトゲ、感覚神経、鼻の発現を支配するエンハンサーです。 このうち淡水魚では腹鰭のトゲのエンハンサーは突然変異し、働かなくなってしまったのです。 (Gilbert & Epelより) | |
キャロル『シマウマの縞、蝶の模様』(光文社)p.238より セキツイ動物における骨格の進化を研究するには恰好の例(北アメリカ北部の湖に住むイトヨ)
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