2012年4月21日土曜日

高校生物:進化発生学



高校生物       進化発生学        by 池田博明 (訳と編集) 2010年3月

■『LIFE』(第8版,2006年)の一部翻訳紹介
 ちなみに,講談社ブルーバックスでは,この第20章を含んだ
 2010年8月に第3巻「分子生物学」が発売予定。


  【一部の図がソフトの不具合により転送不全ですが影響が少ないので修正は少し後で行ないます】

序節 眼の獲得  (LIFE 第8版の第20章より 直訳ではない。大意です)

●第1項 分子ツールキットは発生をどう支配するのか

「生物体に多様性をもたらす発生上の遺伝子は等しいが、結果が異なる」

 多細胞生物のパターン形成を支配する転写因子と細胞外シグナルをコードする遺伝子は分子ツールキットと考えられる。ツールキットとは大工道具箱である。
 植物のMADSボックス遺伝子や、動物のHOX遺伝子がツールキットである。


●第2項 大きな効果をもつ突然変異がどのようにして体の一部だけを変化させるのか

「遺伝子スイッチは分子ツールキットの使い方を支配する」

▲佐々木裕之『エピジェネティクス入門』
(岩波科学ライブラリー,2005)より

 ソライロアサガオの
 フライングソーサーの絞り模様は
 青色色素を合成する遺伝子の
 近くにトランスポゾンが挿入された.
 
 細胞はこのトランスポゾンを抑え込む.
 その働きがトランスポゾンだけでなく
 色素合成遺伝子を抑制する.
 (白くなる)
 抑制が色素合成遺伝子に及ばないと
 青い色素が合成される.

 



▼春化のしくみ

低温はVRN2
遺伝子の発現
を抑制する.
VRN2は転写
因子をコードする.

(Gilbert &
 Epelより)


▲エクジソン活性の調節を説明する仮説.他のステロイド・ホルモン同様,
エクジソンは細胞にたやすく入る(脂質である).内部で受容体と結合,
細胞質にある受容体タンパク質はエクジソンが結合するまでは働かない.
結合した化合物は核内に入り,遺伝子発現を活性化する.それによって,
酵素ヒストン・アセチルトランスフェラーゼや他の転写因子をリクルートする.
(Gilbert & Epel 2009より)
 本文;昆虫のホルモンは転写因子を活性化することで働く.変態・脱皮
ホルモンであるエクジソンは多くの変化を誘導する.エクジソンが結合
することで活性を持った受容体タンパク質が遺伝子を発現する.

「モジュール性は遺伝子発現の時間的空間的パターンを変える可能性がある」
 

●第3項 種が進化する変異はどのようにして可能なのか

●第4項 環境が発生をどのようにモジュール化するのか

「生物体は正確に将来を予言するシグナルに反応する」


一般的なエラー方程式を動作する方法

表.表現型の発生に対する環境要因 (包括的リストではない) (Gilbert & Epell,2009  p.11より)
正常発生に依存する ライフ・サイクルに依存する 胚や幼生の環境適応
A.形態的表現型多形 A.幼生セツルメント A.卵保護
 1.栄養依存  1.基板ー誘導された変態(二枚貝,腹足類)  1,太陽遮断幕(アマガエル、ウニ)
 2.温度依存  2.餌ー誘導された変態(腹足類,ヒザラガイ)  2.植物由来の保護(Ultetheisa
 3.密度依存  3.温度/光周期依存の変態 B.幼生の保護
 4.ストレス依存 B.休眠  1.植物由来の保護(Danaus;カメムシ)
B.性決定多形  1.昆虫の越冬
 1.位置依存  2.哺乳類の遅延移植
 2.温度依存 C.有性/無性発達  【原註】 このリストは
Gilbert,2000によるものだが
決して包括的なリストではない。
 動物中心になっており、
 多くの植物-動物相互作用が
含まれていない。
 3.社会依存  1.温度/光周期に誘導された(アリマキ,Megoura
C.捕食者に誘導された多形  2.温度/コロニーに誘導された(ボルボックス)
 1.適応的捕食者回避形態 D.共生/寄生
 2.適応的免疫応答(哺乳類)  1.血液食(Rhodnius,蚊)
 3.適応的繁殖配分(アリ集団)  2.片利共生(Euprymna/Vibrio,卵/藻類;哺乳利腸内微生物)
D.ストレスに誘導された骨形成  3.寄生(ボルバキア)
 1.出生前(繊維性半月) E.発生的な植物と昆虫の相互作用
 2.出生後(哺乳類の膝蓋骨;ヒトの下顎?)



▼温度依存の
性決定の例.
3種の爬虫類

アメリカワニ
A.mississippiensisi

アカミミガメ
T.scripta

ワニクビガメ
M.temminckii

[Crain & Guillette
1998参照]
(Gilbert &
 Epelより)


マイクロ波statellite一部のcomponenetsは何ですか

▲性決定時期の性比と温度が与える影響(魚の例)
 Menidia menidiaの北部から集められた集団では
温度は性決定にほとんど効果がない.しかし、
南方にくと、温度の効果は大きくなり、高温でメスが減り、
低温でメスが増える.[Conover & Heins 1987参照]
(Gilbert & Epel ,2009より)

▲角の有無がオスの繁殖戦略を決定する
フンコロガシの例.メスは地中に穴を掘って住む.
フンは幼虫の食物である.角のあるオスはトンネル
の入り口を守る.小さくて角のないオスはトンネルを
ガードせず、メスの近くに自分の穴を掘ってメスに
接近する.[Emlen2000参照](Gilbert & Epelより)

▼フンコロガシの一種
Onthophagus acuminatus

角のあるオスと角のないオス
と体長との関係.

 最終脱皮のときの
幼若ホルモンの力価に
よって角の有無が決まる.

 このホルモンの力価は
幼虫のサイズによって
決まる。

 刺激の効果は角なしか
大きな角のある個体を
生じ、ほとんど中間的な
角の個体は生じない。

 角ある大型個体と
角のない小形個体は
異なった繁殖戦略をとる。
[Emlen 2000参照]
 (Gilbert & Epel 2009より)



「将来を正確に予言するシグナルでも、常に応答するとは限らない」

捕食者が誘導する発生の可塑性(マルミジンコの場合)。

頭が突き出たミジンコは捕食者(ハエの幼虫である)に
遭遇した結果、誘導された型。右は正常のマルミジンコ。
単一の無性的なクローンから生じた遺伝的に同一の個体
である。
 頭の突き出たヘルメット型ミジンコはハエの幼虫には消化
困難である。ハエの幼虫が泳いでいる水に触れても誘導は
起こる。
 ヘルメット型のミジンコは頭の小さい型より卵数が少ない。

(LIFEより )
(Gilbert & Epelより)

 



▼捕食者に誘導
された防御

[Adler & Harvell
1990参照]

(Gilbert & Epel
2009より)

▲捕食者がいないときの標準型と捕食者がいたときの誘導型の生存率を比較すると誘導型のほうが高い。

▼ツリー・フロッグの卵塊はヘビに捕食される。するとその振動が卵の孵化を早める。

(B)が捕食者の振動に誘導された5日で孵化した未熟型の幼生
(C)が7日で孵化した正常な幼生

[Warkentin 2005; Warkentin et al., 2006参照]
(Gilbert & Epel 2009より)



▲1922年の「もっとも完全に
 発達をした男性」コンテストの
 優勝者チャールズ・アトラス
 男性の偶像となった.
 ドラッグに頼らずエクササイズで
 筋肉を発達させた人物.
 (Gilbert & Epelより)


ヘビは猫を食べるようになる
▼IGF-1とAKTの活性が
筋肉の発達を刺激する.

(A)IGF-1がその受容体
IRS1に結合すると,
 この結合物はPI3Kを
活性化し,さらにAKTを
リン酸化する。
 AKTは他のタンパク質
をリン酸化する.その
なかにGSK-3βがある.
GSK-3βははelF2Bを
抑制している.
 elf2Bはタンパク合成
開始因子である.
 このGSK-3βがリン酸
化されるとelf2Bを抑制
できなくなり,タンパク質
が合成される。
 AKTのリン酸化によって
他にもタンパク質合成の
抑制がはずれて,
タンパク質が合成される.
 それが筋肉の発達に
つながる.

 (B)マウス胎児の
Akt遺伝子による
二重矢印の筋肉は
i遺伝子転移マウスの
方が野生型より大きい.
 単一矢印は脂肪体の
有無を示す.� ��生型では
脂肪体がある.

 (C)gastrocnemius
筋肉の横断切片.
 野生型より繊維が
長く幅広い.

(Gilbert & Epelより)


▲ゼブラフィッシュの腸は、共生微生物を欠くと正常に発生しない.
腸のアルカリフォスファターゼ活性が青く示される.8日めの横断切片の刷子縁である.
 (A)受精後8日めのゼブラフィッシュ胚の腸で刷子縁にアルカリフォスファターゼ活性があるのが分かる.
 (B)同じ日の胚だが無菌のため活性が無い.
 (C)無菌のフィッシュの5日めにバクテリアを与えて8日めの胚で活性がある.
[Bates et al., 2006参照;写真はKaren Guilleminの厚意](Gilbert & Epelより)

▲クローン選択説.それぞれのB細胞は無数の可能性のなかから一種類の抗体を生産する.
その抗体に特異的な抗原が提示されると、B細胞は分裂し始める.
(マクロファージの消化と抗体の提示は簡略化したため書いていない).この抗原に刺激されて
分裂したほとんどのB細胞は分化し、形質細胞となってひとつの抗体を生産するB細胞クローン
となる.分裂細胞のあるものは記憶細胞となり、もとの抗原と同じものが再侵入するとす早く
反応する.(Gilbert & Epelより)

左側のマメ植物は弱光条件下で生育したもの。

細胞が伸長反応をし、もやし状になった。

右は対照で普通の光条件で生育したもの。

(LIFEより)

 


「生物体は、将来の状態と関係ないシグナルには反応しない」

「生物体は、新たな環境シグナルに対する適切な反応を欠いているようである」

●第5項 発生の遺伝子はどのようにして進化を強いるのか

「進化は既にあるものを変化させることによって進む」

発生遺伝子と失われた構造

ヘビでは背柱の発生におけるホックス遺伝子の
発現が肢形成を抑制する。しかし、ある種のヘビ
では、突然変異が小さな肢を発生させることが
ある。

これらの爪はロイヤル・パイソンの痕跡後肢の
外向きの突起である。

(LIFEより)

 

「保存された発生遺伝子が平行進化をもたらす」



▲トゲウオの平行的系統進化:海にいる3本のトゲがあるトゲウオは小さい(3cm以上はない)。
 海洋性トゲウオ(上)は鋭いトゲと装甲を持つ。
 多くの独立の例では、淡水性のトゲウオは海洋性の祖先に由来し、刺と装甲は著しく退化、
もしくは消失してしまった。海洋から淡水型への系統的変化は一定して平行的であり、
Pitx1遺伝子発現の欠損の結果である。

 Pietx1遺伝子が発現すると、背面と腹面にトゲが発生する。(LIFEより)(Gilbert & Epelより)


▲淡水魚の遺伝子モデル.Pitxl 1遺伝子の近くに4個の遺伝子を仮定します。
この遺伝子は甲状腺、腹鰭のトゲ、感覚神経、鼻の発現を支配するエンハンサーです。
このうち淡水魚では腹鰭のトゲのエンハンサーは突然変異し、働かなくなってしまったのです。
(Gilbert & Epelより)
キャロル『シマウマの縞、蝶の模様』(光文社)p.238より

 セキツイ動物における骨格の進化を研究するには恰好の例(北アメリカ北部の湖に住むイトヨ)
 共通祖先は海生種。今から一万五千年ほど前、氷河が後退を開始したころ、
 氷河湖に閉じこめられたイトヨの集団は、その後、トゲの短いタイプ(浅瀬の水底に住む)と
トゲの長いタイプ(水深の深い水域の中層に住む)に進化した。
 長いトゲは魚食性の魚に丸呑みされることを防ぐ。
 しかし、水底ではヤゴはこのトゲを捕まえる。そこで水底では短いトゲを持つタイプが急速に進化した。
 ブリティッシュコロンビア州の湖に住むイトヨでピトックス1遺伝子の発現を調べたところ、
 腹鰭の肢芽で特異的に発現が欠けていることが分かった。 遺伝子のスイッチに変化が起きて後肢での発現が打ち切られたせいである。
 進化の過程でこのスイッチが変化したことで、魚の発生全体に必須な遺伝子には影響を及ぼすことなく、
ピトックス1遺伝子が腹鰭形成に及ぼす機能が変化したのである。
 アイスランドの湖で採集した貧弱なトゲをもつ別のイトヨ集団でもこれと同じピトックス1遺伝子の発現の変化
が独立して起こっているのが見つかった。

 


    キャロル  進化的革新の四つの秘訣

 新しい形態はいかにして進化するか

 (1)すでに存在するものを使う

      例  クモの紡績突起
         昆虫の翅の進化
         翼の進化
          
      既存の付属肢の変型なのである

 (2)多機能
 (3)重複

        機能が重複している多機能の器官では
        二つの器官に役割を振り分ける

 (4)モジュール性  (モジュールとは集合部品のこと)

        個々の部分の変形や特殊化を可能にする



These are our most popular posts:

東京理科大学 「生態実験」についての内部告発!。 - ブログ

2012年4月10日 ... 内部告発は「東京理科大学 基礎工学部 生物工学科」の卒業生(16期生)からです。 LIAに届いた ... 生物工学科では基礎科学実験で、カエルの解剖を行います。 ... それら、 実験について生徒たちから何か意見が出たか?。 【回答】 .... 清水実験材料株式会社 ( 犬、サル、ミニブタ、マウス、ラット、カエル、メダカ、ザリガニ、イモリ) ... read more

高校生物:進化発生学

主に『生態発生生物学 Ecological Developmental Biology』(ギルバートとエペル、 2009).こんなに面白い本は久し振りです。図版が美しいカラーで魅力的.著者らは「 エコ・デボ」という学問分野を提唱しています。このページに紹介できなかった図は別に『 生態 ... read more

山賀進の読書ノート

... 紹介のページへ飛びます。なお、表の上ほど新しい情報です。 read more

Video: ザリガニ腹部の筋肉の受容体の臓器:固有感覚の学生の研究室 ...

2010年11月18日 ... Proprioceptorsは関節の位置、方向、速度、および筋肉のストレッチを検出する ニューロンです。 proprioceptorsが本体内ではなく、外の ... この室内実験では、一つは ザリガニの腹部を解剖し、MROの関連する解剖学、生理学を学ぶことができます。 ... ファラデーケージは電気録音を妨げる可能性のある外部の電界を遮断するために使用 されている)ケージの内部に設定されます。 .... 内受容の受容体とは何ですか? read more

0 件のコメント:

コメントを投稿